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ビットの戦い

今回は、ビット(Bitto)というチーズを紹介しよう。
夏の自由に放牧された牛のミルクからしか作ることができない、それも製造期間限定の大変貴重なチーズである。
DOP(原産地呼称制度)に認定されているチーズだから、いろいろ細かい決まりがある。

まずは、製造地域:スイスとの国境近くのソンドリオ県全域とベルガモ県の一部
製造期間:6月1日から9月30日まで
ミルクの種類:牛、最高10%までヤギのミルクを混ぜてもいい
製造:搾乳したミルクを冷蔵せず、すぐ使用

DSC04545.jpg

そもそもこのチーズは、ポー平野に住んでいたケルト人たちがローマ帝国人から追い出されて逃れた先、通称ビット渓谷と呼ばれるジェローラ渓谷、アルバレード・ぺル・サンマルコ渓谷で作り始めたものである。人里離れた標高2000メートルほどの高地で作るチーズは、輸送が困難だった時代、長持ちするものでなければいけなかった。“ビット”という言葉はケルト語で“継続する”という意味である。
長い熟成にも耐えるチーズで、10年物のビットも存在するくらいである!

なぜ、今回の題名が“ビットの戦い”なのか・・・
実はこのビットの生産者たちが、数年前に2つの組織に分割してしまったのだ。
一つは、ビットDOP協会。これはEUから認定されている公認協会である。http://www.ctcb.it/ 都合上①と呼ぼう。
もう一つはValli di Bitto(ビット渓谷)という名前で、スローフード協会のプレジーディオに認定されている生産者たちの集まり。http://www.formaggiobitto.com/ ②と呼ぼう。
もともとこのチーズはビット渓谷でのみ作られていたチーズであったが、DOPに認定される際、(これは本当に裏話だが)、視察にローマからわざわざやって来た当時の大臣が、認定生産地域がナンチャラ渓谷・・・なんて言うチョ~狭い、限られた地域なんてありえない!ソンドリオ県全域にしろ!それが嫌なら、私はすぐローマに帰る!っと叫んだため、本家本元のビット渓谷だけでなく、周辺の、当時はビットを作っていなかった地域も全部生産地域としてひっくるめられた。
大喜びしたのは、本家本元以外の地域のチーズ生産者たち。さっそく専門技師を呼び、ビットの作り方を学んだのである。

面白くないのは、本家本元たち。要は②の生産者。

ビットは、地元から離れると、そう簡単には手に入らないチーズである。通のためのチーズでもある。
市場に出回っているビットの値段は①の方が1キロ20ユーロ前後。②のビットは1年物で35ユーロ、5,6年ものは60ユーロ以上する。
②の生産者たちは、夏4ヶ月間、高地で牛とヤギを放牧し、そこで寝泊まりしながら、機械を使わず手で搾乳し、仮設テントで今でも薪を使ってビットを作っている。チーズ作りに使う器具もすべて木製である。長年使いこんだ木製の器具には、チーズ熟成に大事な菌が住み付いており、またそれが抗菌剤の役目も果たす。
DOPの規定では、ヤギのミルクは最高10%までと決められているが、②の彼らは10%から20%ヤギのミルクを混ぜる。それが伝統的な方法であったからである。ちょうど、一頭の牛と一頭のヤギのミルクの割合と同じくらいである。
ヤギのミルクを混ぜた方が、味わいもより濃くなり、ちょっと心地よいほろ苦味が出る。

昨日ミラノで行われたビットの講演会。
食のジャーナリストが中心になり、①の副会長まだ若いサーラ氏と、②の会長チャッパレッリ氏が出席。
お互いの主張を譲らぬ中、白熱した討議が続く。どうやら平行線がまだまだ続きそうである・・・
①の生産者のチーズはDOPのビットのマークを付けて、手ごろな価格で市場に出回る。②の生産者のチーズはDOPのマークを失い、その代わり15個ほどある製造元の放牧小屋の名前入りで、本物志向の人々に食される。熟成段階で、すでに買い手がつくほどの人気ぶりである。

DSC04547.jpg

講演会のあと、それぞれのブースで①と②のビットを試食してみた。
①は、昨年の、牛100%と、10%のヤギのミルク入りのものの2種類。牛100%はねっとりとして甘味がある。ヤギのミルク入りはちょっとほろ苦い。同じく①の2年物は、ナッツ系の味わいがある。
②1年物から7年物まで揃っていたが、いかにも手作り、、、という感じで見た目もバラツキがあり、どれも濃厚なうまみがある。2年物でもまだ、甘味がしっかり残っている。数年経ったものは、鰹節系の味わいがある。

今回の講演会に出席して、いかに伝統を守り続けることが難しいかを実感した。
①の生産者たちのおかげで、ビットは大量生産されるようになり、値段的にも身近なものになった。でもそこには牛への餌や製造方法において、近代化が取り入れられている。②の彼らたちがいてこそ、今のビットが存在するわけだけど、これからの若者が夏4か月も人里離れた山岳地に放牧に行くであろうか?

①のビットを食べた人が、②のビットの存在を知り、高いお金を出して②のビットを食べてみようっと思えばどちらの存在感もありそうな気がするのだけど・・・
私はこう思う:
家で常食する、あるいは料理に使うなら、①のビットを買う。
今日は素晴らしいフルボディーの赤ワインに、ちょっとビットを贅沢に合わせて食べたい、、、と言うときには②のビットを買う。

ビット戦争、どう展開していくのだろうか???

テーマ:チーズ - ジャンル:グルメ

  1. 2010/03/14(日) 04:17:01|
  2. イタリアのチーズ
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